COVID-19が地域経済に与えた影響ー関西地域編
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2003年、当時の内閣総理大臣小泉純一郎氏が2010年に訪日外国人旅行者を倍増の1,000万人にして観光立国を目指す構想を発表して以降、リーマンショックの影響を受けた2009年、東日本大震災があった2011年を除き、訪日外国人は総じて右肩上がりで増加し、2019年には3,188万人にまで達しました。その快進撃的な状況を一変させたのが2019年12月に登場したCOVID-19であり、渡航に大幅な制限が掛けられたことにより翌2020年には87%減の412万人と、2003年のビジット・ジャパン・キャンペーン前の数字まで急転直下してしまいました。
(出所:日本政府観光局)
なかでも、関西(滋賀、京都、大阪、兵庫、奈良、和歌山の6府県)は2019年の訪日外国人の訪問率が全国第2位の大阪、第4位の京都、第5位の奈良と、トップ5に3府県が入り、関西全体として訪日外国人比率が非常に高いという特徴があります(ちなみに、兵庫は第11位、和歌山は第23位、滋賀は第33位)。実際、2019年当時、大阪で有名な繁華街である道頓堀を歩くと、訪日外国人(特にアジア人)が日本人よりも多く、飲食店や小売店の店頭にあるPOPや客の呼び込みも中国語や韓国語の方が日本語よりも目や耳にするようになり、日本にありながら日本とは思えない程の状況でした。日本人を含む宿泊旅行者数に占める外国人の割合は、2020年4月以降は関西も全国と同様に5%を下回り、ほぼ同水準で推移していますが、それ以前は全国に比べ10%以上高い割合で推移していたので、その落差は全国よりも大きくなっています。
(出所:国土交通省 近畿運輸局)
また、電車に乗っても、家電製品や医薬品等、いわゆる『爆買い』による荷物の方が旅行バッグよりも大きい外国人旅行者を見かけるのがごく当たり前の風景であったように、訪日外国人は海外旅行という非日常状態にあるため非常にアクティブで、1人あたり消費額が大きく、単に人数が減少する以上のインパクトがあります。もちろん、『爆買い』の拠点となる家電量販店やドラッグストア等だけでなく、百貨店、ホテル、飲食店、レジャー・観光スポット等を含めて、インバウンド需要が大きく減少することになりました。
一方で、関西では2025年に開催される『大阪・関西万博』等の国際的な大型イベントが予定されています。また、大阪府・大阪市が誘致を目指すカジノを含んだ統合型リゾート(IR:Integrated Resort)計画もCOVID-19を主要因に遅延していましたが、ようやく事業者が決定され、2028年にも開業されるとの発表がありました。賛否両論あるIRですが、造成以降ほとんど空き地状態となっていた夢洲が有効活用される点は喜ばしいことであり、今後これら大型イベントに向けた準備が急ピッチで進むと考えられますが、開催に向けて不安なく、全力で準備できるよう、COVID-19をインフルエンザ程度にまでコントロール可能な状況に抑え込む、より効果的なワクチンや治療薬の開発が期待されます。
COVID-19の影響がここまで長期化し、まだ先が見えないような状況になるとは誰もが予想し得ず、様々な施策が小出し小出しになっている感も否めませんが、未知の事態に適切な対応を迅速に対応できるようにするための備えをしておくことが重要であると考えます。最後に、緊急事態宣言やまん延防止等重点措置等では飲食店を中心とした事業者に多大な制限が課され非常に心苦しいですが、意外と?と言ったら失礼かもしれませんが、関西の飲食店の方が東京よりも制限を守っているように見られ、同じ関西人として誇らしく感じています。
デロイト トーマツ ファイナンシャルアドバイザリー合同会社
大阪オフィス パートナー 中道 規雄