COVID-19が地域経済に与えた影響ー東海地域編

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COVID-19 (新型コロナウイルス) の流行により、一時的に個人消費が落ち込んでいましたが、インバウンド消費への依存が低かった分、地域全体ではダメージは少なかったと思います。一方、カーボンニュートラル、Dxといった社会課題への対応は2021年に入って加速し、With/Afterコロナを見据え、地域全体が次の時代に向けて走り始めています。 

「東海経済のポイント2020(3大経済研比較)」(2021年6月、経済産業省中経済産業局)によれば、東海地方の人口は全国の9%、地域内総生産10%であり、「東海はおおむね1割の経済圏」と言えます。一方で、「製造品出荷額等」は全国の19.8%であり、製造業の一大拠点となっています。

一方、COVID-19以前の2019年において、外国人観光客の宿泊者数のシェアは3.6%(東京圏31.6%、大阪圏30.8%)であり地域規模の割に低くとどまっていました。また、宿泊目的のうち観光目的は46.3%(東京圏59.3%、大阪圏77.9%)と低いものでした。いかにして外国人観光客にこの地域に宿泊してもらうかが2019年当時の地域課題でした。地域全体で外国人観光客の誘致に取り組み、その成果が見えてきた矢先に、COVID-19禍に見舞われることになりました。中部管内の百貨店販売額指数(2015年=100)は、2019年93.3に対して、2020年は69.3まで落ち込むことになります。

(出所:V-RESAS

しかし、COVID-19の影響は当地域では相対的に低かったと言えます。「最近の管内総合経済動向」(2021年9月14日、経済産業省中部経済産業局)によれば、鉱工業生産指数は2021年4-6月において103.2(東海3県、2015年=100)まで回復してきており、全国(同97.7)と比較すると回復は顕著です。また、2020年の個人消費は対前年比+0.4%(全国▲1.5%)の小幅増加となっています。これは、東海経済が製造業の割合が高い産業構造であり、インバウント消費への依存が低かったためと推察されます。

働き方においては、テレワークを導入した企業も多くありますが、どちらかというと大手企業のコーポレート部門に限定され、現業部門や中小企業は、引き続き出勤が続いているように思います。
リモート会議は確実に増え、これまでどちらかというと面談を重視していたものが、国内海外を問わずリモート会議を利用する機会が増えました。

喫緊(2021年9月現在)の課題として、半導体不足への対応が挙げられます。大手製造業の減産が見込まれる中、在庫投資など、将来の増産を見込んだ対応をどのように行うのか慎重な判断が必要とされています。過去を振り返ると、貿易摩擦や円高、素材価格の上昇、各国の関税政策の変更など、社会構造変化が起こる度、当地域の企業はサプライチェーンを変化させてきました。今回の半導体不足への対応も構造変化を伴う変化が起こる様に思います。

また、カーボンニュートラルやDxへの対応は、明確な期限を切って対応が求められています。体感として2021年度に入ってから、多くの企業が、堰を切ったように、既存の事業の再編を行い、効率化図り、新規の投資先を検討しているように思います。あたかも、2020年に溜めた力を2021年に発散している様です。

これから先10年に目を移すと、新未来都市開発、アジア競技大会、リニア中央新幹線等のマイルストンがあり、地域一丸となってWith/Afterコロナの新しい時代を歩んでいくことになります。

COVID-19の影響は相対的に小さかった記述したしましたが、飲食店業に携わる方々、旅行業に携わる方々、航空産業に携わる方々など、COVID-19の影響を大きく受けた皆様は日々大変な苦労と忍耐を重ねながら、再生を図っています。平穏な日常が戻ってくることを願って止みません。この地域の皆様に助けられてきた者として、元気な地域を繋いでいくために、微力ながら貢献させていただきたいと思います。


デロイトトーマツファイナンシャルアドバイザリー合同会社
名古屋オフィス パートナー 青柳 拓志

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