COVID-19が地域経済に与えた影響ー東北編

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震災後10年。2021年3月11日

2020年初頭から拡大したコロナ禍は東北にも大きな影響を与えました。2021年3月11日という震災後10年の節目を、東北が復興した形として示す機会を計画していた地域もたくさんあり、コロナ真っ最中で迎えた当日は当初描いたものとは違っていたかもしれません。

多くの地域ではこの日に向けて遺構や慰霊・祈祷が可能な場所を整備し多くの人に訪れてもらう事を予定していましたが、当日は現地の方においても参加を見送った方が多くいらしたのではないかと思われ、各地自粛モードで慰霊祭などが執り行われました。

インバウンド需要のその後と光明

震災以降、インバウンド需要により活気を取り戻した地域においても、需要回復が望めないまま現在を迎えています。宿泊業者の中には、これまで他都道府県に流れていた修学旅行需要を取り込んだり、都会地域の学生が都会では仲間との交流が果たせないなか、地域の宿を借り切って交流を深める需要を取り込んで、急場を生き抜いている事例が報告されています。

沿岸部においては、東北の小道を繋いだ、「みちのくトレイル」が広がり、ヒッチハイカーなどがその小道をたどって歩みを進めるケースが徐々に増加し、コロナ禍における東北の旅行の方法として今後注目が高まるのではと期待をしています。

(出所:V-RESAS

新たに獲得したブランド「安心・安全」がもたらしたもの

岩手県は全都道府県の中でも最も遅くコロナ感染者が発出した地域として注目を浴びたため、安心・安全な地域であるという評価を得るに至りました。地域事業者においては、コロナ禍で実施した採用活動において、これまでは応募がなかった西日本エリアから問い合わせが増えた時期があったとの報告がありました。

宮城県内では、いち早く、採用需要を取り込むための取り組みとして、「地域人材会社」を設立して、自社のみでは首都圏からの人材を採用しきれない会社のために、地域人材会社で一旦採用した人材を複数の会社で活用し人材コストの負担を低くしながら採用をするための試みが始まり注目を集め始めています。

NHK朝のテレビ小説「おかえりモネ」が伝えてくれるリアルと“しぶとくいけ~!”

2021年現在、NHK朝のテレビ小説で放送されているのは、宮城県気仙沼市、登米市を舞台にした「おかえりモネ」です。コロナに入る直前に2021年の朝のテレビ小説が宮城県沿岸部を舞台に撮影されることが決まり、地域住民に大きな光をもたらしました。震災当時、高校生だった主人公の百音(ももね)は震災当日に受験のため仙台を訪問しており、地元の気仙沼市の離れ島である大島(ドラマでは亀島)に滞在することができませんでした。

百音は、自身が何もできなかったという思いを持ちながら、自身が地元のために何ができるかを考え、気象予報士の資格を取って地域の災害を未然に防ぐことを自身の役割にしたいと考えます。登米市での林業経験と資格試験勉強、取得後の東京でのテレビ局勤務を経て、地元に戻った百音は、地域に生きる気象予報士を目指しますが、地域の人たちは一旦地元を離れた百音に対して冷ややかです。

そんな百音に漁師の祖父がかけた言葉が、「しぶとくいけ~!」です。元々、東北人が持ち合わせていたしぶとさに、この10年の経験がさらに強くてしなやかなしぶとさを作り出し、このコロナ禍でそれが生きているのではと感じます。地域で商店を営む小売業者は、地域に行きたくてもいけない首都圏人材向けに、地域商材の買い物代行を始め、来るべき旅行解禁に備えています。そのサービスを私自身も利用しておりますが、値付けの安さを憂いており、きちんと利益を取っているかが心配になり、アドバイスをしてみると、「大丈夫です。実は結構利益載っています。ご心配に及びません」とのこと。なんとも、しぶとく、逞しい限りです。


デロイトトーマツ人材機構株式会社
取締役 吉川 玄徳

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