COVID-19が地域経済に与えた影響ー広島地域編

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広島の感染状況

2020年春より日本国内に拡散し、4月には全国緊急事態宣言が発令されたCOVID-19 (新型コロナウイルス)ですが、広島初の患者確認は2020年3月6日でした。しかし、行政による感染防止の指導と、地域住民・企業による感染予防の努力が功を奏して、2020年11月までは感染者数を2ケタ台に抑えてきました。広島県では、積極的なPCR検査と営業自粛要請による感染抑止策を行っており、結果として、2021年9月11日時点において、広島県の県別累計感染者数は14位であり、10万人当たりの感染者数においても、北海道、兵庫、福岡などの都道府県と比較して低い水準にあります。

地域企業の対応

COVID-19は、他の地域同様に、産業に対して様々な影響を及ぼしています。まず、広島県の主要産業として、自動車製造が挙げられます。自動車生産台数の推移をみると、COVID-19の世界的拡大を受け、一時的には生産台数が大きく減少するものの、2020年秋には海外向けで需要の回復がみられ、生産台数も回復しています。県内の消費動向についても、2020年には販売が低調となりましたが、2021年には、COVID-19予防のための三密回避に伴う、キャンプなどアウトドア関連需要の高まりを受けてSUVなどの新型車の販売が好調となっています。また、電気機械、プラスチック製品においては、外出自粛に伴う巣ごもり需要により、テレビ、ノートパソコン、タブレット端末の生産が増加しております。設備投資についても感染拡大当初は投資の先送りも多かったものの、需要の回復に伴い、徐々に持ち直してきている状況です。

卸売・小売業に関して、スーパー、ホームセンター、ドラッグストアにおいては、巣ごもり需要やマスク、除菌スプレー等の衛生用品に対する需要増加により、特に2020年においては売上が増加する一面もみられました。2021年においては、2020年の需要増加の反動減があるものの、生活必需品に対する需要は安定的に推移しております。百貨店では、海外ブランド製品などの高額品が好調である一方で、外出自粛や営業自粛による来店客数減少の影響を受けています。

製造業や卸売・小売業に対して、観光業・飲食業は大きな影響を及ぼしています。原爆ドームおよび厳島神社はそれぞれ世界遺産に指定されております。さらに、風光明媚な瀬戸内海沿岸や、豊富な海産物、中山間地域の果樹などの観光資源があるため、コロナ前まで、広島県は多くの観光客を集めてきました。このため、COVID-19による観光客の減少は影響が大きく、広島市において2020年の観光客は対前年比で約4割減、このうち、外国人観光客は約9割減になっています。ただし、2020年夏から冬にかけての日本政府によるいわゆる「Go To トラベル」キャンペーン期間においては、2019年に比較して宿泊者数が大きく増加する傾向が見られています。今後、ワクチン接種が進むなどして、人々の活動自粛が緩和した際には、観光客が大きく増加することも期待できそうです。

働き方への影響

行政からの指導もあり、対面形式でのミーティングやセミナー等のイベントについては、自粛や延期などの影響を受けています。また、オフィスワークについても、リモートワークが推奨されているものの、国交省の調査によると、2020年12月時点の広島県のリモートワーク利用率は約10%弱であり、東京都約30%(2020年12月)に対して低い水準となっていますが、感染者数に対して直接的には大きな影響を及ぼしていない模様です。

今後の動向

(出所:V-RESAS

イベントチケット販売数の推移を見ると、2019年同月比はマイナスの推移であるものの、2020年に比して、2021年は増加傾向にあり、徐々に回復している様子が伺えます。ここから、コロナ渦においても、感染対策をしっかりと行うことで、感染リスクを抑えながら、イベントを開催できることが読み取れます。

いま、広島では広島駅、中央公園、西飛行場など複数の再開発プロジェクトが進んでいます。これらのプロジェクトが完了する頃には、感染症対策を取りながらも様々なイベントなどが実施できることが期待できます。

今後、COVID-19のリスクを管理しながら、徐々に感染拡大前の賑わいを取り戻していき、さらに発展する広島が面白くなっていきます。


デロイト トーマツ ファイナンシャルアドバイザリー合同会社
広島オフィス 担当マネージングディレクター 後藤 孝久

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