COVID-19が地域経済に与えた影響ー北海道編
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「北海道」と聞いて、多くの人が思い浮かべるのは、「食」と「観光」ではないでしょうか。
実際に北海道には美味しい食べ物が多くありますし、世界自然遺産の知床を始めとする6つの国立公園と5つの国定公園があり、豊かな自然を愉しむことが出来ます。ブランド総合研究所の「地域ブランド調査2020」では12年連続で第1位となっており、国内観光地ランキングでも第1位を占めています。
北海道は、国土の約22%の面積に約4%の人口を抱え、道内総生産(2017年度)は全国の3.5%、小売業年間販売額4.6%、製造品出荷額1.9%という経済規模を有しています。
経済構造は、1次産業4.3%、二次産業17.3%、三次産業78.4%(北海道「平成30年度道民経済計算」)となっており、全国平均に比べて一次産業と三次産業の割合が高く、二次産業の割合が低くなっています。
北海道の農業の粗生産額は約1.2兆円で全国の約14%を占めており、小麦、馬鈴薯、大豆・小豆、玉ねぎなど多くの畑作物や牛乳の生産量は全国1位となっています。耕地面積は全国の26%(1,144千ha)を占め、1戸当たり耕地面積は22.7haと全国平均の1.4haを大きく上回っています。北海道の基幹産業の一つである畑作・酪農においては、大規模化と効率化が進められており、機械化やAIを活用した技術の開発・導入も進んでいます。気候の変化や品種改良の成果から北海道産のお米の品質が向上しており、特Aのブランドの「ゆめぴりか」や「ふっくりんこ」などが全国上位の評価を受けています。ワインの生産も余市地方等で盛んになっています。
北海道の観光は、豊富な自然と食事を中心としたもので、札幌や小樽での観光のほか、道内各地で温泉や景勝を愉しむことが出来ます。ニセコのパウダースノーは、オーストラリア人を中心としたスキーを楽しむ外国人観光客に人気があり、ニセコエリアではコンドミニアム等の開発が進み、全国でも有数の地価上昇を続けています。
羽田・千歳間の国内路線は全国1位の旅客数の基幹路線で多くの航空会社の路線が乗り入れています。海外観光客の増加に対応するために、国際線ターミナルが2011年に建設され、2019年に増設が行われました。また、2030年には北海道新幹線の札幌延伸が予定されており、札幌の市街地では1972年の札幌オリンピック前後に建設されたビルの建替えが続いています。
(出所:V-RESAS)
2020年の春先に始まった新型コロナウイルス感染症の感染拡大は、北海道経済にも大きな影響を与えました。
特に観光関連では、国内観光客数が2018年度552万人、2019年度の527万人から2020年度は333万人へ減少し、外国人観光客が2018年度311万人、2019年度244万人から2020年度はゼロとなった影響が非常に大きく、ホテル等の宿泊事業者や旅客交通事業者等の業績は低迷しています。一方で、札幌市内を含むホテルの建設は一部を除き継続されており、特にニセコエリアでは外資系企業を中心とした高級コンドミニアム等の建設は引き続き堅調です。新型コロナウイルス感染症により、北海道の観光事業は厳しい状況が続いていますが、多くの経済人は、北海道の観光資源が劣化した訳ではなく、新型コロナウイルス感染症が収束した後には必ず復活すると信じています。
新型コロナウイルス感染症は、農業にも少なからず影響を与えました。全国的な外食産業への休業要請等に伴い、牛肉等の食材の需要が一時的に減少しました。
公共事業関連予算は前年並みであり、民間の建設需要も前述したように堅調のため、建設・土木関連事業は大きな影響は無いものと認識しています。
新型コロナウイルス感染症により、Zoom等でのリモート会議が一般的に利用されるようになりました。会議への出席のための移動時間が不要となったこと、出席者の日程調整が容易になったことなどのメリットがある反面、細かいコミュニケーションを取る機会が減少してしまった課題は全国的な認識と違いがありません。ただ、道内企業での在宅勤務の導入は在京の企業やその子会社と比較するとかなり低い印象があります。これは、IT化が進んでいない企業が多いことが原因なのかもしれず、今後のIT化やDX化の余地が多いことを示している可能性があります。
また、本社機能を北海道に移転した道外企業に関するニュースも時折目にするようになってきました。当社においても、札幌に居ながら道外の業務に関与する機会が増えています。新型コロナウイルス感染症が与えた働き方の変化は、首都圏から遠隔地であることが障害であった北海道の企業や経済に新しい事業展開の可能性をもたらすきっかけになっています。
有限責任監査法人トーマツ
札幌事務所 パートナー 五十嵐 康彦