(本インタビューに係る撮影のため、周囲確認の上、一時的にマスクを外して頂いています)
Takamitu株式会社
専務取締役 高橋祥享氏
秋田県大仙市において、1957年から公共工事を手がけているのがTakamitu株式会社です。現在は測量から設計、工事、産業廃棄物の処理に至るまでプロセスを一貫して対応できる体制を整え、これまでに数多くの建設工事に携わってきました。
同社は現在、公共工事だけでなく、民間工事にも積極的に対応するべく体制を整えており、その取り組みの中で新たに外部人材を採用しています。
ここでは同社の専務取締役である高橋祥享氏に、事業の現状や外部人材を採用した背景、そして地域経済などについてお話を伺いました。
目次
現在の事業内容について教えてください。
- 当社は秋田県大仙市に本社を置き、建設および工事と解体、リサイクル、測量などの事業を行っています。創業したのは1957年で、これまでに数多くの実績を積み上げてきました。
たとえば工事部門では高度な技術が求められるダブルウォール工法を用いた防砂工事や、環境に配慮した水路工事、経年劣化および老朽化に伴う損傷を修復する橋梁補修工事などを行ってきました。
また建設に関するすべての事業の起点となる測量部門においては、測量から設計、施工、検査、維持管理、そして更新に至るまでのすべてのプロセスにおいて情報化を前提とした「i-Construction」を2016年度より導入しています。また、大規模な現場での起工測量や出来形測量、土量管理に有効なUAV(ドローン)の活用や、対象物をミリ単位の制度で計測し、高精度かつ高速に計測が可能である3Dレーザースキャナーによる測量も実施しています。
リサイクル部門を有していることも、我々の事業における特徴の1つです。石炭を燃焼した際に生じるフライアッシュから良質な再生骨材を生産する煤塵のリサイクルのほか、水銀が含まれているため適切に処理する必要がある、蛍光管をリサイクルするための工場も建設しました。そのほか、木くずやがれき類のリサイクルも行っています。
外部人材を採用した経緯を教えてください。
- 当社は創業当初から公共工事を主に手がけていたため、民間工事を発注する企業との接点はほとんどありませんでした。従来は公共工事が数多くあり、民間工事を手がけなくても問題はなかったのですが、しかし昨今では公共工事が大幅に減少しつつあります。
ここ数年、当社が手がけていたのは秋田県における大規模災害からの復旧工事です。しかし、それが完了したことで受注は大きく減少しました。このまま公共工事に頼った経営をしていては厳しいと感じ、昨今では民間工事を受注するための取り組みを進めています。
ただ、先にお話ししたとおり当社は民間企業とのつながりがありませんでした。当然ですが、コネクションのない企業をいきなり訪問して営業活動を行っても、なかなか受注にはつながりません。また入札を行っている企業であっても、それに参加する資格を得ることも容易ではないのが実情です。
このような背景から、外部人材を活用して民間企業とのコネクションを構築することを検討することになりました。
実は2年ほど前から経営幹部人材の紹介を行っている政府系人材紹介会社とやり取りしていて、自社の状況について詳しくお伝えしつつ、課題解決につながる人材を紹介していただきたいと担当者の方に伝えていました。その結果、我々が工事を受注したいと考えている企業との架け橋となることができる人材を紹介していただきました。その人物は我々が「こういう人に来ていただきたい」と考えているどおりの経歴だったため、ぜひ当社に来ていただきたいとお伝えし、顧問として力を貸していただくことになりました。
その方は期待していた以上に民間企業とのコネクションが強く、当社に大きな力を貸していただいていると感じています。成果が生まれるのはまだ先ではありますが、発注元となる企業に我々の技術力を見ていただける段階にまで進むことができました。
当社には60年以上この業界で事業を続けてきた実績とノウハウがあり、さらに産業廃棄物の中間処理まで担えます。このため、測量から工事、そしてその中で出た廃棄物の処理まで一手に担うことが可能です。こういった我々の強みをぜひ見ていただき、民間工事の受注につなげていけたらと思います。
また当社の雰囲気も変わりつつあります。公共工事だけでなく民間工事にも力を入れていくことに加え、すばらしいキャリアを持つ顧問の方に来ていただいたということで、従業員の気持ちは引き締まっています。
本社のある大仙市の経済状況をどのように感じていますか。
- 地域経済はかなり厳しい状況にあると強く感じています。少子高齢化が進んでいることに加え、特に秋田県は人口減少も進んでいる状況です。また公共事業も以前に比べると大幅に減っているため、我々のような業界で事業を継続していくのは容易ではありません。
当社の場合は公共工事から民間工事へのシフトを進めていますが、一方で我々と同じように公共事業を中心として工事を手がけてきた企業の中には、廃業を検討しているところもあると聞いています。経営陣だけでなく従業員の高齢化も進んでいて、その上さらに公共工事の発注も減少しているという状況では、事業を続けていくことはなかなか難しいということでしょう。
我々の地域では人材の採用も容易ではありません。当社では新卒採用も行っていて、以前は1人の募集に対して10人程度の応募がありました。しかし今は完全に売り手市場で、人材を確保することも難しくなっています。地方経済の発展を考えたとき、人口減少や人材の採用難は大きな足かせとなるため、国や地方自治体による対策に期待したいところです。
大仙市はどのような土地なのでしょうか。
- 大仙市は秋田県の南東に位置していて、ある企業が実施した居住満足度調査で、秋田県の第3位に選ばれました。
日本の秘境100選に選定された乳頭温泉や多くのスキー場があるほか、日本三大花火大会の1つである全国花火競技大会も開催されています。食べ物もおいしいですね。比内地鶏は有名ですし、最近ではいぶりがっこも全国的に知られるようになっています。
子供を育てやすい街としても認知されつつあります。18歳までの子供の医療費に関して、自己負担分を全額助成してもらえるほか、地域子育て支援拠点などもあります。今まさに子育てをしている人たちにとっては、魅力的なところではないでしょうか。
今後取り組んでみたいことがあれば伺わせてください。
- 今後取り組んでいきたいと考えているのは、SDGsに関連した事業です。リサイクル事業を行っていることもあり、当社は環境問題に強い関心を寄せてきました。特に大仙市は自然環境が豊かな土地であり、その魅力をどうやって守っていくかは重要な課題であると感じています。
今後、こうした自然保護や地球温暖化対策を支援するビジネスを展開し、住みやすい地域と豊かな社会作りに取り組んでいきたいと思います。
ただ現状の当社の資産だけでは、こうした取り組みを進めるにも限界があります。そのため、今後も外部人材を積極的に活用しつつ、SDGsの実現を積極的に支援していきたいですね。
地域企業の可能性・今回の採用のポイント(編集担当より)
- これまでお話をお聞きした通り、Takamitu社の高橋専務は地域企業の後継者として、様々な経営課題・地域課題に対して向き合い、日々活動をされております。地域企業が直面する課題は様々ではありますが、高橋専務のお話しにあったとおり、地域経済は地域の差はあるものの年々厳しくなっており、少子高齢化等の影響により、特に企業の人材採用活動が難しくなってきている現状があります。そういった状況の中でも、昨今の環境変化をいち早くつかみ、自社が直面している経営課題と、その課題解決に必要な人材を考え、そして人材を確保して課題解決に取り組むこの姿は、多くの地域企業にとっても参考になるスタイルであるといえるでしょう。
今回の高橋専務が獲得した人材は「シニア層の顧問人材」でしたが、このような方策は、今後、多くの地域企業においても有効に作用する可能性があり、同時に地域企業における今後の人材採用・獲得の一つの手段として大きな効果を発揮する手法といえます。「シニア層の顧問人材」は、現在多くの企業が積極的に採用をされておりますが、実際に参画された顧問人材の方にミスマッチなくご活躍いただくためには、いくつかの重要なポイントがあります。
一つ目のポイントとしては、「企業の経営課題を的確に把握しているか」という点となります。前述のとおり、高橋専務は、自社の現状をしっかりと把握されており、解決しなければならない課題の優先順位と、解決するためにどのようにすればよいのかという解決策を綿密に検討されておりました。この「解決すべき課題」が明確になっているのかという点は、人材獲得のみならず、企業経営においては重要なポイントといえるでしょう。
続いて2つ目のポイントとしては、「企業側のニーズ・求める人材の要件が明確であった」ことが挙げられます。人材獲得が成功する上で重要な点は、やはり「求める人材像」が明確である必要があります。今回は、解決すべき課題が明確であったことに伴い、必然的に「求める人材像」も明確になった事例といえます。
最後の3つ目のポイントとしては、「参画された人材の感情移入」が挙げられます。最終的に参画された人材にご活躍いただくうえでは、その人材にとって「ミッションの魅力・社会への貢献」など、単純な業務実施事項ではない、企業の在り方や、社会への貢献、将来の成長の道筋、企業の経営理念など、経営上の上位理念に対して、どれだけ共感をしてもらえるかという点が重要となります。今回のケースでいえば、高橋専務からの強いラブコールに加え、高橋専務が考える当社の今後の在り方、事業戦略、今後地域で成し遂げたいことに共感してもらい、一緒に事業活動を遂行していく上でのパートナー的存在として参画いただけたことが、今回、スムーズに本事業が進捗していることの大きなポイントとして挙げられます。
人材獲得は、多くの企業で重要な経営課題であり、苦労されている重要事項となっております。是非、地域企業における人材獲得の効果的な手法として、本ケースをご参考にしていただければ幸いです。
(本インタビュー内の写真につき無断転用等を禁じます。)
企業情報
企業名 | Takamitu株式会社 |
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住所 | 〒014-0207 秋田県大仙市長野字新山92番地1 |
電話番号 | 0187-56-3626 |
Webサイト | https://www.takamitu3.co.jp/index.html |